東京高等裁判所 昭和43年(ネ)798号 判決 1969年4月28日
大東京信用組合
理由
被控訴人主張の本件約束手形は被控訴会社の代表取締役の一人である三輪宗夫が代表者名義で振出したものであること、被控訴会社には他に一名船見宏という代表取締役があり、右二名の代表取締役は共同して控訴会社を代表する旨の定めのあることは当事者間に争いない。
被控訴人は右三輪は本件手形振出については一人で被控訴会社を代表する権限のあつた旨を主張するので先づその点について判断するに
《証拠》を綜合すると控訴会社では銀行に宛て又は銀行において控訴人の計算で支払われる控訴会社名義の手形を振出すときには共同代表者の一人である三輪宗夫の単独代表名義でなすことに相手方銀行とも取決めをなし、そのとおり実行しており、本件手形もその例に習い三輪が単独代表名義で振出したものでその単独代表振出の点については支払担当銀行は勿論、控訴会社の他の一名の代表取締役である船見宏も承認しておりもう一人の取締役もこれに異存のなかつたことを認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。
以上認定事実からすると控訴会社に共同代表の定めがあつたとしても、銀行を支払場所とする本件手形振出については代表取締役の一人である三輪宗夫に控訴会社を代表して手形を単独代表名義で振出すことを共同代表者の他の一人においても承認していたもので、三輪に右振出の権限があつたものと解するのが相当で、控訴会社は振出人として本件手形金支払の義務ありというべきである。被控訴人が本件手形を裏書譲渡によつて取得し、現に所持人であること、満期に支払場所に手形を呈示したが支払を拒絶されたことは当事者間に争いない。
そうだとすると控訴人は被控訴人に対し本件手形金五十八万三千八百円及び満期である昭和四十二年九月五日以降支払済まで手形法所定の年六分の利息を支払う義務がある。よつて被控訴人及び控訴人のその余の主張について判断するまでもなく被控訴人の右請求を認容した原判決は相当であるから民事訴訟法第三百八十四条第一項により本件控訴を棄却